第20回 タバコを吸うことが脱毛の原因になったりしますか?

質問
 タバコを吸うと末梢の血管が収縮してハゲになるぞ……などと言われますが、タバコを吸っているのに髪の毛がフサフサしている人もいますよね?私は1日に1箱ほど吸っていますが、そのためか女なのに薄毛になりかけています。タバコと抜け毛の関係を教えて下さい。
(北海道 H.M子 二四歳)

回答
 女性の喫煙人口は最近増加傾向にあり、特に20代の増加は著しく、この10年余りで倍増していると言います。会社や家では控え気味にしているものの、会社帰りの喫茶店や飲み会の席ではおいしそうに一服している姿が目立ちます。
 緊張の後の一服は、疲れをとり、気分転換に役立ち、精神を落ち着かせてくれるようで、タバコ有益説を論じられそうになりますが、私はタバコを吸わないからという訳ではありませんが、若い人や女性のタバコは好ましくないと考える一人です。
 なぜかと言いますと、タバコの煙の中には4000種類もの化学物質が含まれており、そのうちの200種類は明らかに有害だと言われ、さらにそのうちの50種類は発ガン性もあると言われているのです。後の3800種類の成分の中にも、有害なものがあるかもしれないとなると、有益説は消えてしまうのです。
 タバコの害については、 ニコチンは血管を収縮させるため、血液循環を悪化させ、一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結合し、酸素運搬能力を低下させ、全身的な酸欠状態を引き起こしてしまいます。 またタールの中にはベンゾピレンなど数多くの発がん物質が含まれているのです。
 40歳以上の日本人男性によるタバコの害の調査では、1日25本以上の喫煙者は非喫煙者に比べ喉頭ガンは90倍以上、肺ガンは7倍の死亡率になるという報告があります。 別の調査では、1日20本を越えると心筋梗塞などの虚血性心疾患は3.2倍という報告や、喉頭癌は33倍、肺癌は5倍、食道癌は2倍というような報告もあるのです。
 また女性のデータでは、喫煙と経口避妊薬の相乗作用により、虚血性心疾患やクモ膜下出血の危険性が著しく高まると言われていますし、低タールたばこは本数が増えると一酸化炭素により、虚血性心疾患の危険を高めてしまいます。また妊婦が喫煙した場合には低体重児、早産、妊娠合併症などの率が高くなることも報告されています。
 脱毛との関係ですが、ハゲは遺伝や男性ホルモンなどが関係し、タバコの影響によってハゲになるのは何倍かというようなデータは残念ながらありませんが、ハゲの問題よりも「健康」に害を与えることの方がもっと重大であるのです。
 たしかにヘビースモーカーでもフサフサの人もいますし、吸っていないのにハゲの人もいますが、「百害あって一利無し」と言われるものを吸っているということは、赤信号を無視して渡っているようなもので、何時爆発するか分からない爆弾を抱えているようなことなのです。
 美容上では、 ヘビースモーカーは皮膚の水分量が少なくなるため、潤いが無くなり、肌はカサカサして張りが無くなり、肌荒れが起こったりフケが多くなってしまいます。 皮膚の状態が悪化すれば抜け毛も多くなってくるのです。
 タバコの煙の害は、吸っている本人(主流煙)よりも、他人が吸っている煙(副流煙)を吸い込む方が危険物質が多いのです。1日20本以上吸う夫をもつ妻は、非喫煙者の妻に比べ、肺ガンの死亡率は2倍も高いという報告もあります。
 あなたが他人に対して加害者にならない吸い方をしているのであれば、髪や健康に関しては自分のことですので、吸い続けるかどうか決めるのはあなたの自由です。
(全理連中央講師 板羽忠徳)

参考資料
●喫煙が毛髪に与える影響

 ハーバード大学公衆衛生学部の調査によると、喫煙がアンドロステンジオン、テストステロンやデヒドロテストステロンなどのほとんどすべての主要な男性ホルモンを増加させることがわかったというもので、無作為に抽出した1241人の米国人中年男性の喫煙者と非喫煙者のホルモン量を比較した結果、デヒドロエピアンドロステロン(DHA、副腎由来の循環男性ホルモン前階程物質=DHEA)は喫煙者においては、非喫煙者よりも18%も高く、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA−S)は喫煙者において13%も高い数値を示し、アンドロステンジオン(テストステロンの代謝産物)は喫煙者において33%もより高い数値であったし、テストステロンは9%、そして脱毛と関係するDHT(デヒドロテストステロン=テストステロンの代謝物)は13%と高い値を示した。
 特に DHTはテストステロンと5αリダクターゼ還元酵素の作用を受けると脱毛量や脱毛のスピードを加速化させます が、薄毛や脱毛は男性ホルモンの量ではなく、男性ホルモンに対する感受性の強さ(5αDHTへの変換)によって起こると考えられていることから、禁煙することにより薄毛が治るというものではありませんし、脱毛する傾向があるような人であってもそれを確実に止められるというものでもありません。
 この研究は、喫煙とホルモンの関係を調べたもので、特別に脱毛に関して研究しているものではありません。脱毛への影響は女性も含めて調べたり、血液循環などにもふれなければなりませんが、喫煙することにより脱毛をより促進したり、脱毛量を増加させる危険性があることを調査結果は示していると言えます。
●紙巻たばこ煙有害物質
タバコ1本あたりの有害成分の量は、副流煙の方が主流煙より多く(下記倍率)、また副流煙は強いアルカリ性で、主流煙より粘膜刺激性が強いことが明らかにされています。
●発がん物質例
ベンゾ(a)ピレン       3.4倍
ジメチルニトロソアミン 19-129倍
メチルエチルニトロソアミン 525倍
ジエチルニトロソアミン   2-56倍
N-ニトロソノルニコチン 5倍
ニトロソピロリジン 9-76倍
キノリン 11倍
メチルキノリン類     11倍
2-ナフチルアミン 39倍
4-アミノビフェニール 30倍
O-トルイジン 19倍
●その他の有害物質例
タール(総称として) 3.4倍
ニコチン 2.8倍
アンモニア 46倍
一酸化炭素    4.7倍
二酸化炭素     1.3倍
窒素酸化物 3.6倍
フェノール類 2.6倍

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