第24回 ヘアカラーにPPTは必要なものなのでしょうか?

質問
 PPTも最近はいろいろなものがあるようで、何を選んだらよいか分かりません。できましたらそれぞれの特徴や、髪質や損傷の程度による選定法などを教えて下さい。
(山口県 K.K 理容師)

回答
 PPTは「 Polypeptid=ポリペプチド」の略で、ケラチンやコラーゲンなどを加水分解して作られます。通常100〜300の多数のアミノ酸が結合したもので、毛髪への吸着がよく、毛髪はアミノ酸からつくられていることから、 損傷部分を修復するコンディショナー作用や保湿作用を持っています。
 ヘアカラーやパーマなどの薬剤を使用した化学的な施術により、 髪がダメージを受けると、イメージ通りの色やウエーブが得られなくなってしまいます ので、PPTを使用して毛髪の内部構造を補ったり、ダメージを受けたキューティクルを保護してあげることが必要になってきます。 ヘアカラーの場合は、 PPTは色素粒子の流出による退色 も防止してくれますので、二重の効果が期待できます。
 PPTは種類や分子量の大きさ、配合の割合などによって、様々な役割を持たせることができますので、それらをあげておくことにします。
★原料によるPPTの分類
◎ケラチンPPT
 ケラチンを完全に加水分解して得られ、主要成分はグルタミン酸、シスチン、セリン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、プロリンなど。
 髪の内部にある繊維質を補強する力があり、コンディショニング作用を持ち、髪にハリやコシを持たせることができます。
◎コラーゲンPPT
 コラーゲンたんぱく質を完全に加水分解して得られ、主要成分はグリシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、セリンなど。
 保湿効果、コンディショニング作用があり、潤い感を与え髪にしなやかさを持たせることができます。
◎シルクPPT
 蚕の繊維を構成するタンパク質のフィブロインを加水分解して得られ、主要成分はグリシン、アラニン、セリン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシンなど。
 分子量が大きく、吸着性や浸透生に優れており、均一な保護膜を形成し、吸湿性が少なく髪にツヤをだし、サラッとした風合いになり、手触りを良くすることができます。
◎小麦たんぱくPPT
 小麦蛋白を加水分解して得られ、酸性アミノ酸であるグルタミン酸、アスパラギン酸が非常に多いため保湿性が高く、ベタつきもなくツヤ、手触り感が良くなります。
◎大豆たんぱくPPT
小麦たんぱくPPTと同様の作用を持ち、さらに塩基性アミノ酸も多く、皮膚との親和性、毛髪への吸着性も良くなります。
★PPTの分子量による分類
◎高分子タイプ (1000以上)
 毛髪内部に入りにくく、キューティクルに付着し、補修および保護の目的で用いられます。高分子量のものほどハリ、コシを与えます。
◎低分子タイプ(400〜700)
 大きさが小さいので毛髪内部に入りやすいのですが、出やすくもあります。
  (全理連中央講師 板羽忠徳)

参考資料
 クリニック的に技術を考えた場合、傷むことが分かっている場合は、できるだけ傷まないようにして効果を出すと言う風に考え方を変えなければなりません。
 PPTを効果的に使うことができれば、ヘアカラーの色味をきれいに発色させたり、パーマであれば、ウエーブを長持ちさせることができるようになります。その逆に、正しく使用しないと染毛剤やパーマ液の力を弱めることになります。薬液の力が弱まると、カラーの場合、イメージした色が出ない、明度が上がらない、色持ちが悪い、といった失敗につながりやすく、パーマの場合は、かかりが悪い、ウエーブだれを起こしてしまう、などの失敗の原因になることがあります。そのため髪質や技術目的、髪の損傷程度などによってより効果的なPPTが多く入っている商品を選ばなければなりません。
★髪質による選定
◎乾燥したりパサつく髪の場合
 コラーゲンPPT(髪をしっとりさせたりツヤを補う効果が高い)
◎ハリ・コシがない髪の場合
 ケラチンPPT(髪に弾力を持たせることができる)
◎キューティクルが傷んでいる場合
 シルクPPT
★技術目的による選定
◎カラーを綺麗に発色させる
 コラーゲンPPT(カラーの発色に必要な間充物質を補う効果が高い)
◎ウエーブを綺麗に出す
 ケラチンPPT(ウエーブ形成に必要なシスチンが多く含まれている)
★髪の損傷度合い別効果的なPPT◎ハイダメージ毛の場合
 高分子タイプのPPT
 ハイダメージの状態では低分子だと流れやすいので、分子量の大きめなものの方が効果的。
◎ダメージ毛の場合
 低分子タイプのPPT
 内部に浸透しやすい低分子タイプを使い流失したたんぱく質を補う。
◎PPT誘導体
 PPTにはいろいろな成分と結合させたPPT誘導体というのもあり、これは結合させるものによっては、パーマやヘアカラーなどに影響を与えるものもあります。
◎カチオン化
 プラスイオンを持ったアミノ酸を結合させているもの。
 損傷するとプラスイオンを持ったアミノ酸の流出が起こります。マイナスに耐電している状態にカチオン化されたPPTを使用すると、マイナス、プラス、でイオン結合され、吸着が良くなります。
◎アルキル(アシル)化
 オイル成分と結合させているもの。毛髪を柔軟に仕上げます。
◎シリル(シリコン)化
 シリコンと結合させているもの。指通り感触が良くなります。
(注) アルキル化、シリル化のものは主にアフターに用います。プレ用に使用すると発色しにくくなる、かかりにくくなるなど影響を与えることがあります。全成分表示制になりましたので、配合成分の多いものから順に明記することになっていますので、PPTの配合の多少等は推測がつくようになりました。

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