第55回 生え際の髪がいつの間にか結ばれているのですが・・・

質問
お客様の髪についてお尋ね致します。前頭部の生え際の髪が時々結ばれてしまうとのことです。スコープで観てみましたらみごとに結ばれていました。普段も、風をきってもなるそうです。ナ〜ゼ??
(東京都  M.A美  理容師)

回答
お送り頂きました髪の毛を検査しましたら、太さは55ミクロンで日本人としては細いほうで、一部キューティクルが剥がれていました。このような結び目ができた毛を「結毛」と呼んでいますが、インターネットで検索をしてみましたら、かなりアヤフヤな回答が多かったでした。
たとえば@「毛幹に灰白色の小さな結節ができ、その部分から毛が折れる病気である。これは頭毛の中央にできやすく、たまにはひげなどに起こることがある。」とか、A「女性に見られるものの代表的なくせ毛が結毛症といって、毛の途中に折れ曲がって結び目を作る状態で、ここで折れやすく、パーマなどの刺激や毛染めなどの科学物質によることが多いです。」とか、B「髪の毛は様々な損傷を起こすと毛髪の中央から先端の方にかけて結び目が出来、これを結毛症と呼びます。結毛症になった毛髪は折れやすくなり、結節性裂毛を起こすこともあります。」など、と書かれていますが、@は灰白色ということは結節性裂毛の症状で「節性裂」を省略して「結毛」としたもので、頭毛の中央というよりも毛先5cm位の所に発生しやすく、ひげの場合はよほど長くしていなければ発生しません。Aは結び目をつくることから「結毛」ですが、パーマなどの刺激や毛染めなどの科学物質により結び目ができるというものではありません。Bは損傷を起こすと「結毛」になりやすいのですが、結毛ができたからといって結節性裂毛になるというものではありません。
それでは 発生原因ですが、毛髪の「からまり」にあります 。髪が細くて有る程度長い場合で、洗顔時やシャンプー時に髪をからませたり、ブラッシング中や風に吹かれて髪の毛がランダムな動きをした場合や、寝ていて枕でこすれたような場合に髪の毛がこんがらがり、偶然に結び目が出来てしまったもので、その状態になったものをブラッシングやコーミングなどでとかし、毛先に力が加わったことで結び目が締め付けられて「結毛」ができ上がります。
短くて弾力のある健康な髪の場合は、偶然結び現象が起こったとしてもまた自然にほどけて元に戻るのですが、 長い髪の場合や、弾力の無い細い髪や、乾燥状態の髪、今回のもののようにキューティクルが傷ついている髪のような場合はほどけにくいため結び目ができやすい のです。
「結毛」ができないようにするためには、髪の毛を「からませない」ようにすることが大切で、なるべくショートヘアにすることが一番ですが、他にはトリートメントやシリコン処理をして髪のすべりを良くしたり、ブラッシングの際には毛先をとかしてから中間からをとかし、最後に根本からとかすようにしたり、シャンプー後はリンスなどをして帯電防止を施しておくことが必要です。
(全理連名誉講師 板羽忠徳)

参考資料
●竹状毛・陥入性裂毛・連珠毛
「結毛」は物理的に単純に結ばれた状態になっている毛を言いますが、「結毛症」と言っているものの中には、珍しい症例ですが専門的にはNetherton症候群の場合があります。
この場合は、毛幹に竹の節状の結節をつくり、毛は折れやすく、魚鱗癬とアトピー素因を持っている場合に発生しやすく、常染色体劣性遺伝で女性に発生しやすいという特徴を持つbamboo hair(竹状毛)やtrichorrhexis invaginata (陥入性裂毛)のことを言っている場合があります。
また、一定の間隔で膨らんだ結節ができ、その形状が数珠のように見えることから、理美容業界などでMonilethrix(連珠毛)と言われていたものも、電子顕微鏡によりその構造がはっきりしたことから、医学書で言われている陥入性裂毛と同一のものであることが分かりました。
●結節性裂毛
毛幹部に結節したように白っぽく膨隆したところが見られるもので、一般に染毛やブリーチ、パーマ、紫外線などにより何らかのダメージを受け、損傷し、乾燥している所に強いブラッシングなどによる無理な力が加わったような時に、毛先に近い部分が一時的に強く引き伸ばされるために毛の組織が壊され、繊維状のコルテックス(毛皮質)が、竹の棒を石に叩きつけて折った時と同じように組織がバラバラの状態になります。このような状態の毛をtrichorrhexis nodosa(結節性裂毛)と言いますが、さらに乾燥したり強い力が加わると、その部分から切れてしまい、日時が経つに従いその部分が裂けてtrichoptilosis(枝毛)になってしまいます。
予防としてはヘアオイルなどを塗布し、毛の異常乾燥を防ぐようにします。一度発生したものはカット以外に処置がありません。

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